前回は、インテリジェンスシステムにおける、「意思決定サイド」と「情報サイド」の関係性についてでした。
今回は、収集した情報の中に誤り、陳腐化、不足など様々なステータスが入り混じった情報をどう扱っていくかについてを書いていきます。
収集したデータに対して考慮すべきこと
情報サイドが、正しいインテリジェンスの生産に最大の努力を払ったとしても、誤りを100%避けることはできません。
その理由は、
① 限られた時間や手段で、必要なインフォメーションがすべて集まるとは限らない/すべては集まらないことの方が多い。
② 集めたインフォメーションが間違っている可能性がある。
③ 意図的に流された誤報を、それと気づかずにインフォメーションとして集めてしまったかもしれない。
④ 対象事象が時々刻々変化しているにもかかわらず、収集した異なるインフォメーションの取得時間にズレがある場合が多い。
(図1に、収集した各インフォメーション間に存在する取得時間のズレの様子を示します。また、図2に示すように、インテリジェンスの生産を中心に考えた場合、インフォメーションの収集は「過去」、インテリジェンスの生産は「現在」、カスタマーすなわち意思決定者が決断して物体や事象に対して行動を起こすのは「未来」という点にも考慮が必要です。)
⑤ インフォメーションからインテリジェンスを生産する方法(解析、分析、推定等)が適切でない可能性がある。
などです。


そのためインテリジェンスの生産では、多くの場合、“予測”が必要となります。
「予測をする」ことは、「起りそうな仮説(ストーリ)を考える」ことに相当します。一般に、多くの場合、仮説は複数立てることができます。
図3は、n種類の仮説が考えられる場合を示しています。このような状況で、どの仮説が実際に起こる可能性が最も高いと言えるでしょうか?
すでに集めたインフォメーションの中にその手掛かりがない場合、仮説ごとにこれから発生する事象を考えて“網を張る”必要があります。
すなわち、もしこれから仮説2のように事態が推移するなら事象2、B2,C2,…が生じるはずであると考えて、それらの事象や兆候の有無を知るために、新たに情報要求(インフォメーション要求)を行います。
他の仮説に対しても、同じようにその仮説が当たっているなら生じるはずである事象に網を張って、時間の許す限り様子を見ることになります。
では、最も発生する可能性が高い事態が分かれば、インテリジェンスになるのでしょうか?意思決定者や状況によっては、「イエス」です。
しかし、その事態に対して、意思決定者が採りうる行動(アクション)が複数通りある場合、それらの行動に対するリアクションの推定が参考になることがあります。その場合、インテリジェンスには、そのリアクション推定結果も含まれることになります。
なお、行動には、「何もしない」ことも含まれます(図4参照)。


このようにして生産されたインテリジェンスでも、時として、誤ることがあります。その際、重要なことは、意思決定サイドは必要以上に情報サイドに対して度を超えた責任追及をしないことです。
「誤り(失敗)は、未来の成功に繋がっています」
情報サイドは、インテリジェンスの生産に際しては、誠実に現在保有している資産や知見を最大限に活用すると共に、誤りが生じた場合はその経験を将来に向けて最大限活かすよう仕組みの変更やノウハウ等の蓄積を行います。
このような、意思決定サイドと情報サイドの良好な関係が、インテリジェンス生産体制をさらに進化/強化させることになります。
インテリジェンス生産に関する少し堅い話が続いてしまいました。
次回は、身近で簡単な例を挙げて、具体的にインテリジェンス生産の工程と考え方を見ていきましょう。