「インテリジェンス」って、何なの?第2回インテリジェンスの生産方法(後編)

前編では、インテリジェンスサイクルの概要について触れました。

今回は、インテリジェンスサイクルの各機能について、お話ししたいと思います。

振り返りとして、インテリジェンスサイクルは、タスキング(Tasking)、収集(Collection)、処理(Processing)、解析/判読/分析/予測(Exploitation)、配布(Dissemination)、によって構成されており、このサイクルのことをインテリジェンスサイクル、その仕組みを各機能の頭文字をとってTCPED(ティーシーペッド)と呼んでいます。

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では、TCPEDの各機能はどのような役割を果たすのでしょうか。

① タスキング(T) 


カスタマーからリクワイアメントを受け付け、それに的確に対応する(インテリジェンスを生産する)ために集める必要がある情報のリスト(EEI: Essential Elements of Informationという)を作成するとともに、各機能の部門に必要な指示を行い、スケジュール管理を行います。

インテリジェンスが生産できたら、その内容がカスタマーの要求を満足しているかどうかを確認し、OKならばカスタマーにインテリジェンスを送付(回答)します。OKでなければ、各機能部門にさらに作業を指示します。

② 収集(C)


EEIに基づいて、インテリジェンスの生産に必要な情報を収集します。

③ 処理(P)


必要に応じて、いろいろな処理を行います。

例えば、情報が画像で、暗すぎたり明るすぎたり歪んでいたり色あせていたりして使い辛い場合は、画像処理により使いやすい画像に変換します。

④ 解析/判読/分析/予測(E)


リクワイアメントに応えるべく、収集/処理した情報(インフォメーション)を解析/判読/分析します。集まった情報の間に“矛盾”がある場合には、特に慎重に真実を探るようにします。

集めた情報に不足がある場合には、タスキングに対して新たに情報を要求し(EEIに新たな情報項目を追加してもらい)ます。リクワイアメントが、“予測”や“実施すべき行動”や“その行動に対して想定されるリアクション”に及んでいる場合には、その検討を実施します。

⑤ 配布(D)


解析/判読/分析/予測(E)で生産されたインテリジェンを記載した報告書をデータベース(アーカイブ)に仮登録し管理します。(タスキングは、仮登録された報告書が、カスタマーのリクワイアメントを満足しているか否かをチェックします。)

インテリジェンスサイクルの生産


多くの場合、これらの一連の作業は、データベースで必要な情報を共有しながら実施します。

タスキングは、カスタマーのカウンターパート(リクワイアメント受付/インテリジェンス配布の窓口)であると共に、情報サイドの司令塔であるため、経験豊富で優秀な担当者がアサインされます。

インテリジェンスサイクルをICT技術で効率良く的確に回して高品質のインテリジェンスを生産できるように組み立てられたシステムが「インテリジェンスシステム」です。

カスタマーは、情報サイドから寄せられたインテリジェンスに基づいて意思決定を行い関連部門に行動のための指示(命令)を出します。

この時、カスタマーには、「利益の自覚」すなわち何が利益なのか、ということについて明確な判断基準を持っていることが求められます。

インテリジェンスサイクルを回すシステム規模は、その組織に応じてパソコンやワークステーション1台で一人が操作するものから、数百人以上の人員が数百台以上の端末を操作し数十ペタバイト(PB)以上のデータベースを保有しながら24時間365日運用するものまで多種多様です。

個人でインテリジェンスを生産する場合(すなわち意思決定サイド(カスタマー)と情報サイドが同一人物)、コンピュータシステムを用いるまでもないことも多くあります。

その場合でも、インテリジェンスサイクルを意識してEEIを作成したり、収集した情報を照合したり分析したりすることで、極めて客観的/合理的で納得できる(説得力のある)満足度の高いインテリジェンスが生産できることでしょう。

次回は、「意思決定サイド(カスタマー)と情報サイドの注意すべき関係」
や「収集したデータに対して考慮すべきこと」などについて、話を進めたいと思います。