皆さん、「インテリジェンス」と聞いて、どんなイメージが頭に浮かびますか?
・スパイ映画 ・怪しい世界 ・地下組織 ・諜報機関 ・秘密… などなど、あまり良いイメージを持たない人が多いかも知れません。
でも、今から2000年以上前の春秋時代から、インテリジェンスの重要性が認識されていました。
当時の中国の思想家である孫武(「孫子」は、その敬称。)は、“彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず”(敵についても味方についても情勢をしっかり把握していれば、幾度戦っても敗れることはない)で知られる「兵法書」を著しています。
兵法書とは、戦いに勝つ方法を具体的に綴った書物です。
その中で、必要な情報を集めて行動に役立てるための知見を得ることが、特に重要であると説いています。孫武は、すでにインテリジェンスの重要性を正しく理解していました。
インテリジェンスは、戦いに勝つために役立つだけでなく、様々な目標達成のために大変役立つものです。
目標として、志望校に合格、憧れの会社に就職、快適な住居の獲得、年収アップ、人気向上、理想の恋人獲得、体型のスリム化、難病の克服、昇進昇格、名声獲得、スポーツの試合で勝利、悠々自適の老後生活、企業業績向上、コストパフォーマンスに優れたフルコースディナーを楽しむ、人気のコンサートや試合のチケット獲得、…など、戦争とは全く異なる分野でも、インテリジェンスは大活躍します。
1.インテリジェンスの定義
思わぬ誤解を避けて物事を正しく理解し合うためには、まず、使う言葉の意味をお互いに確認しておくことが重要です。
…ということで、これからのインテリジェンスの紹介に先立って、インテリジェンスを次のように定義(約束)しましょう。
<インテリジェンスの定義>
インテリジェンスとは、意思決定に必要な知識である。
Intelligence is the necessary knowledge to make a decision.
この定義、多分、世界で一番シンプルなインテリジェンスの定義だと思います。(インテリジェンスという言葉の世界統一的な定義は、なされていませんので、20編以上のインテリジェンスに関する書物や文献資料等を参考に私が考案しました。でも、広く世界でも通用すると思います。)
この定義から明らかなように、“誰が見てもインテリジェンスである”というものは、ほとんどないと言ってもいいでしょう。
意思決定に必要であり、その役に立たなければ、インテリジェンスとは言えません。
Aさんにとっては、非常に重要なインテリジェンスであっても、Bさんの意思決定にとって役に立たなければ、Bさんから見ればそれはインテリジェンスではない、のです。
いつ、どこで、誰が、どう見ても(どう考えても)成り立つように定義される数学や物理の定義と、その性質が全く異なる点が面白いでしょう?
ところで、インテリジェンスもインフォメーションも、日本語では共に「情報」と訳されます。しかし、インテリジェンスの世界(分野)では、インテリジェンスとインフォメーショは、明確に使い分けています。その違いを端的に表現すると、下図のようになります。
すなわち、物体や事象等に関する事柄がインフォメーションであり、一般にインテリジェンスはインフォメーションを収集し、処理・解析・分析・予測等を行って「生産」される意思決定に必要な知識、という関係があります。
もし、インフォメーションが、そのままその人の意思決定に役立てば、その人にとってそのインフォメーションはインテリジェンスでもある、ということになります。
2.社会や私たちの生活との関わり
日常、私たちは無意識でも様々な意思決定をしています。行動の前には、必ず意思決定がなされています。何も行動しないことも、「じっとしていよう。」「何もしないでおこう。」という意思決定の結果と言えます。
従って、私たちは、好む/好まざる、にかかわらず、あらゆる種類の意思決定の連続で生きているのです。ということは、無意識でもインテリジェンスを生産していることになります。
例えば、
プライベートな時間で
何時に寝て何時に起きるか、何を食べるか、どの電車に乗るか、歩くか走るか、挨拶するか/無視するか、電車の中でスマホをいじるか/新聞読むか/寝るか/ぼんやり車窓を眺めるか、どの服を着るか、休日をどう過ごすか、喧嘩で謝るか/突っぱねるか、誰と何処でデートするか、いつまでに結婚するか、どんな家庭を築くか、どのテレビ番組を見るか、コーヒを飲むか紅茶を飲むか、親の誕生日に何をプレゼントするか、…。
仕事の時間で
今日はどの仕事をどの順番でこなすか、受注のためにどのような作戦を立てるか、予期せぬトラブルをどのようにして解決するか、スケジュール遅れをどう挽回するか、失注をどのようにして穴埋めするか、来年度の受注/利益をそれぞれ20%/15%向上するにはどのような施策を実施するか、どんなプロジェクト体制を構築するか、リーダを誰にするか、…。
列挙しだすとキリがないほど、私達は毎日毎日、意思決定をこなしています。
このように、私達や私達の社会は非常に多種多様かつ複雑なので、絶えず、膨大や量の意思決定を繰り返しながら進んでいます。従って、意思決定の前段階で必要不可欠なインテリジェンスは、私たちの生活に密接に関係し影響を与えていると言えるでしょう。
3.優れたインテリジェンスの必要性
一言で意思決定といっても、その重要度には大きな違いがあります。
何を食べようと、どんな服を着ようと、乗る電車を一本遅らせても、その選択が最適/最善でなくても/しくじっても、大問題にはなりません。しかし、開戦の決定、フィアンセの選定、難病の治療方針の決定、経営方針の決定などは、意思決定の内容がその結果に非常に大きな影響を与えるため、テキトーでイイカゲンな意思決定や誤った意思決定は、極力、避けねばなりません。
必ず目標を達成したいときや、少しでも良い結果を得たいと強く希望するときは、優れた意思決定が必要です。
優れたインテリジェンスを生み出す必要性はここにあると言えます。
次回は、優れたインテリジェンスの生産方法について、話を進めたいと思います。