NPSを薦める可能性はどのくらいありますか?

~ 顧客の期待を超えた「感動体験」 ~
顧客満足度は、「過去」の指標であり、「将来」を予測できない。
顧客満足度は、「必要条件」であるが、「差別化」要素にはならない。
顧客満足度は、「自己満足」に終わり、肝心な「収益性」には連動しない。
顧客期待、知覚品質、知覚価値、顧客満足・・・
技術発展によりアンコントローラブルな情報が増す中、顧客との関係構築に向け、このモデルを見つめ直したロイヤルティ・マーケティングに注目が集まる。
1) NPSが伝えるロイヤルティのデザイン
企業利益を高めるCS戦略(カスタマー・ロイヤルティ)。
NPS(ネットプロモータースコア)を使って、「伝道者」「傭兵」「人質」「テロリスト」を見極め、顧客の生涯価値を最大化せよ。
2) 信頼なるNPSを活用したバリュー・マネジメント
NPS(ネットプロモータースコア)は、企業のKPI(重要業績評価指標)になりうるのか。
顧客重視の取り組みとして、NPSを経営と一体化させ、実施すべきことを見極め、手を打つ。
3) NPSを薦める可能性はどのくらいありますか?
感動体験がNPS(ネットプロモータースコア)のスコアを左右する。
「顧客第一」を精神論で終わらせず、NPSを用いたタッチポイントを分析することで組織的な成長を促す。

 


タッチポイントにおけるNPS分析

顧客は事前期待が外れたと感じたとき、不満やロイヤルティの低下につながる。

従来の顧客満足度調査では、最も評価の低い不満・不安を見つけてこれを改善していくことが主流であった。

しかしながら、顧客満足度をただ高めるだけでは「新規顧客の獲得」にはつながらず、推奨者にもならず「リピート率の向上」にも必ずしもつながらない。

そのデータは「参考データ」程度にしか扱わなくなる。

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「満足したか」は、過去の経験を問う顧客本人だけに起因する。
しかし、「人に薦めるか」は、将来の行動を考えて答えてもらうよりストレスのかかった質問である。

従って、顧客のその後の行動は回答と近い結果になり、今後の業績にも影響することになる。

顧客満足度の指標は、全体的な満足度⇒継続的な購入・利用⇒推奨へと移ってきた。

満足度調査の分析においては、この流れを全体として把握する。
顧客はニーズを知覚したあと、検討⇒購買⇒利用の様々なタッチポイントを経験しそれぞれを評価する。

それぞれのタッチポイントにおける満足度がその上位にあるプロセス別の満足度と知覚され、それが総合され、全体的な満足度に統合され、さらに継続購入のロイヤルティとなり、NPSと表れる。
さらに統計学を用いた重回帰分析などで、どのプロセスがどの程度NPSに寄与しているかを測ることになる。

ちなみに、NPSを理解していないマーケターのよくある間違いを紹介しよう。

NPSは一つのシンプルな質問に基づいているが、質問が「薦めたいと思うか」を問う内容になっていることがある。
「薦めたいと思うか」は気持ちを問うているのであって満足度調査にすぎない。

正しくは「薦める可能性がどれくらいあるのか」を問うのであって、薦めることを前提に将来の自分の行動に対しコミットメントを行う究極の質問である。

だから、将来の行動に対し企業業績への相関が生まれるのである。

NPSは正しく測る必要がある。

 

「モノ」から「コト」への感動体験でNPSを向上

顧客満足だけでは差別化にならず、顧客の期待を超えることがロイヤル顧客の獲得につながる。

顧客は、「この価格でこの商品・サービスを購入したら、こういう結果が得られるだろう」という、ある一定の期待値を持っている。

期待通りの体験ができ、特に不快感がなければ「満足」と答える。

しかしそれではロイヤル顧客にはならない。

どこかで顧客の期待を超える必要がある。

どこで期待を超えるか?

・商品、サービスそのもの
・タッチポイントの質

左脳で満足してもらうだけでなく、右脳で感動させる。
機能に満足してもらうだけでなく、情緒面で強くポジティブな印象を残すことが重要である。

「モノ」から「コト」へと。

無題

<頭>
・ベストのサービス
・ベストの価格

<心>
・私を大切にしてくれている
・私の意見を聞いてくれている

NPSの向上にも、この「感動体験」の創造に取り組むことが重要である。

「不快感」の除外は必要条件だが、これだけでは差別化にはならない。

 

NPSを批判から推奨へ

「顧客第一主義」、「お客様のために」は精神論で終わってしまう。

顧客満足度が正しく測定できるということにはとても大きな意味がある。
自分の現実を見つめ、ありたい姿と比較し、目標をセットすることもできる。

企業経営も同じ。

財務的な成果は測定できる、顧客満足は財務ほど簡単に測定できない。
測ることが出来ないと、マネジメントは非常に難しくなる。

さらに、満足度調査を利用する側は、導入時に抵抗感が強く、前向きな結果の活用にならない。

・詳しくない第三者から自分の業務を評価されることに対する抵抗
・個人の評価に繋がるという不安
・他者と評価が比較されることの不安
・調査結果から具体的な示唆が見えない
・統計学による調査結果の数字の見方・読み方がわからない

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しかし、調査結果のスコアを上げることが企業成長に直結するとなれば、それは経営にとって最優先課題になるはず。

NPSは、もっとも業績相関が高く出た指標である。

<NPSは管理指標として、顧客リレーションシップの健全性を測る>
・全社的なビジョン・目標の提示
・NPSの改善成果と業績への効果

<NPSは行動規範として、顧客ロイヤルティ向上の取組みを実践し、組織的な成長を促す>
・重要なタッチポイントでの改善策を明確化
・顧客の生の声を聞いて改善
・組織力、風土の改善

NPSは、トップダウンによる顧客ロイヤルティの管理指標だけでなく、ボトムアップによる組織全体の行動規範としての役割を担う。

 

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第2回 信頼なるNPSを活用したバリュー・マネジメント


*Net Promoter Score® および NPS® は、Bain & Company、Fred Reichheld、Satmetrix Systems の登録商標です。