○中途採用市場
ここ3,4年のIT業界における中途採用市場の求人倍率は、年々右肩上がりになっています。
2015年夏頃に「そろそろ上げ止まるだろう」という予想もありましたが、2016年も求人倍率は上がり続け、2016年下期になってやっと数字上も実感としても、上げ止まった感じを受けています。しかし、上げ止まったと言っても、ここ数年で最も求人倍率が高く、業種でみれば「IT」が、職種でみれば「SE」が、業種・職種で求人倍率のトップになっているのが実態なのです。
このような、IT業界の中途採用市場において、私たちが中途採用を成功させるために、何に取り組んできたのか一部ご紹介します。もちろん、企業によって応募者のターゲットが違ったり、中途採用予算が異なったりしますので、ここでは選考する際に一番重要視するであろう面接選考について、どう考えて、どう取り組んできたのかにポイントを絞ってご紹介します。
○面接選考ですべきこと
面接というと、面接官が応募者の技術スキルや業務知識、リーダ・マネジメント経験、ヒューマンスキルを判断する場であると考えるのが一般的です。もちろん、その判断力は非常に重要だと思います。しかし、現在のIT業界の中途採用市場においては、完全なる片手落ちになってしまいます。
面接にて採用すべき人材であるかを判断しても、自社だけを選考している人など求人倍率をみてもわかるようにまずいません。採用すべき人材と判断される応募者は、他社からも同じ判断をされるのです。よって、入社意思を獲得しなければ意味がないのです。
むしろ、判断するための面接した時間が無駄だったともいえるのではないでしょうか。つまり、面接という場は応募者から入社意思を獲得する場であることを絶対に忘れてはならないと考えています。
○以前の面接官
お恥ずかしいのですが、以前の面接官の悪い例を紹介します。
・面接の最初に名乗らない。
…どんな人か分からない面接官と話すことになる。
・質問の仕方が上から目線。
…できるか?知っているか?などの問いかけであり、「できない」「知らない」だと会話が止まる。
・残業はどのくらいやれる?という質問。
…残業が多いのではないかという不安を掻き立ててしまう。
・部門の紹介をあまりしない。
…どのような仕事をするのかイメージが沸かない。
・仕事の話しかしない。
…サバサバした印象。会社の雰囲気が全く掴めない。
他にもありますが、この辺にしておきます。
正直以前はこのようなケースが多くみられました。よって、いい人材だなぁと思っても入社意思を獲得するのが非常に難しかった時期がありました。そこで、応募者はどのような気持ちで面接に臨んでいるのかという原点に戻り、シンプルにその気持ちに答えるスタイルに変革していったのです。
○応募者が求めるもの
応募者は社格や給与、福利厚生など定量的に判断する部分はあるかと思いますが、採用担当者がその点を変えることは非常に難しいですし、それを言い訳にしては採用することはできません。多少給与が低くても、多少福利厚生が少なくても、当社に入社意思を抱いてくれるためにどうするかに注力するのが、採用担当の役目だと思っています。
では、応募者が定性的に判断するものはなんであるのか?
応募者や転職エージェントに色々とヒアリングしていった結果、大きく以下の3点に絞れました。
・面接(官)の雰囲気
・仕事(プロジェクト)のイメージ
・キャリアアップイメージ
採用担当者からしてみると当たり前のような項目かもしれませんが、採用担当ではない面接官はそんなこと知りません。よって、まずは面接官がこの実態を理解し、具体的方法に納得してもらったうえで、面接に臨んでもらいました。
○面接官が変わった
面接対策講座のようなセミナーを開催した後の面接は、驚くように変わったのです。
面接対策で基本的な面接官の心得や所作を伝えたのですが、それだけではなく
・自己紹介だけでなく、会社における自組織の立ち位置を説明する。
・知識・スキルだけでなく、プライベートな質問をして、応募者自身に興味を示す。
・大変なことも説明するが、フォロー体制ややりがいなどを説明する。
などまでやっていただけたのです。
私自身、毎回面接に同席するわけではないですが、面接対策後に面接同席した際、あまりの変化に感動して目が潤んでしまいました。(笑)
また、これだけではなく、採用担当としても面接後に応募者の良い点のフィードバックをするなどして、入社意志獲得に努めました。
○最後に
2015年度に行った施策ですが、2014年度と比較して承諾率が上がったかというと、実際は微増に過ぎませんでした。しかし、求人倍率が増加している中での微増ですから、成功だったと思っています。
もちろん、面接対策だけで中途採用が成功するわけではありませんが、
・会社が応募者を判断する
・応募者が会社を判断する
という2軸が面接にはあるという原点を忘れずにこれからも採用活動を行っていこうと思います。
また、今回の成功は面接官の協力があってこそだということを実感し、面接官の方々には非常に感謝しています。